図書館で手に取ったのは「おじいさんの台所の死」で、このシリーズの最後の本であった。
面白いのでその後全部借りてきた。
逆順で読んだ事になる。
著者は当時
伝承塾という女ばかりの会社を立ち上げて活躍している実業家。
初めの本はS61年に出版されていて5刷増刷されている。かなり反響をよんだらしい。
慶女は3女、父親は資産家に生まれた。1度も働かず殿様暮らしから資産も食い潰し、妻に死なれて娘4人と息子1人に面倒をかけながら一人暮らしをすることになる。 83才~90才で亡くなるまでの記録である。
慶女は父親に日記を書くことを勧める。それがこの本の元になっている。
台所に立ったこともない父親に料理を特訓。鬼軍曹と言われながら愛のムチを容赦なく揮う3女。
母親が亡くなったときは、娘達も父親を引き取ろうとしたり、キョウダイが結束していたが、時が経つにつれそれぞれの家庭の事情も変ってきて気持ちが離れて行く。
それがよく書かれていた。
慶女は東京でバリバリ仕事をしているが、父親が心配で何度も名古屋の父の許へ帰り面倒を見る。
長女2万・次姉と妹と弟は1万・自分は5万を負担して父親の生活費に当てるという話し合いが出来る。
弟は事業の失敗で親の家を抵当に入れて夜逃げする。立ち退きの危機のときも3女は2千万を用立てて、父親がそのまま住めるようにした。
1番面倒を見て、経済的援助もしているのに、父親が亡くなると遺産の分配も平等にと姉妹が出てくる。
今までの献身を認めてもらえない。非常に無念な思いをする。
明治生まれの父親は3女に感謝しながらも、姉妹は嫁いで他家のもの、3女は独身なのでいまだに佐橋家のもの。父親の面倒を見るのは当然・・・という世間での立場を崩さない。
読んでいて一人暮らしの老人の淋しさが伝わってくる。
娘達の暮らしも忙しい。車を待たせて夕食の差し入れをするとすぐに帰ってしまうと嘆く。
「ボクはエサだけもらって生きる留守番という籠の鳥か・・・」という記述がある。
この中から印象に残った数点について書いてみたいと思う。 つづく