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手稲火葬霊場へ
告別式を終えて私たちはバスにのり、兄一家はベンツに乗った。
兄はこの年代にしては早く免許を取り、取りたてのころは「便所にいくのにも車でいきたい。」といっていたものだ。最後にベンツに乗せてやりたいと、これも兄嫁の思い。
霊場に着くとびっしり大型バスが並んでいる。我々は41台目で駐車場で待ち時間30分とか。里塚霊場の方は51台もきてるとか・・・月曜日が友引でその余波らしい。
ここはできてから2年目くらいでとてもきれい。煙突などは見当たらない。
昔は煙突からあがる煙をみて無常を感じたものだったが。
シルバーの人たちの定年後の職場になっているのか、そんな年代の人たちがキビキビと立ち働いている。ひんやりした火葬室に棺の前にならんで、これからの説明を聞く。
となりの次兄が「こういう声が聞こえないんだよな~」という。わたしも・・と目を見てうなずく。耳の遠い家系なのだ。
葬儀関係はどこでも抑えた静かな声で説明するし、集まった人たちも気を使って低い声になる。その中で悪い耳で聞き取ろうとするので疲れてしまう。
兄嫁が私には聞き取れないことにも難なく会話しているので羨ましい。
とうとう兄は焼却炉の中へ入って扉を閉められた。
湾曲形にならぶ控え室には全部特別控室○○号と書いてある。ぜんぶ特別では特別じゃないのに・・と笑う。この特別控え室でお弁当を食べる。ビール・酒・つまみもあるが、みんなこの日は車で帰るので飲む人はいない。
あの人は誰?この人は?・・と知らない顔を教えてもらう。エツ!あの人が昔お正月によくトランプをした従兄弟なの・・普段の交流がないから分からない。1時間半後、館内放送が流れて・・・兄は白骨となって。
長男の胸に白布に包まれた遺骨が抱かれて再びベルコ会館へ。むかし石ひとつだけが入った悲しい遺骨という箱もあったのだった。
最後の読経のあと、葬儀と言うすべての儀式を終えてみんなに別れを告げる。
お元気でね・・・今度会うときはまた誰かの葬儀のときかしら・・・もうみんな集まるほどのお目出度いイベントはないのだった。
つづく
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