ネコを戸口につないで、日光浴させていると、近所の人が寄って
きて「幸せなネコだねぇ、この兄弟は何処に行ったのか、この所
姿が見えないよ」という。 ノラの時代を知っている人である。
言われるたびに、よぎる思いがある。
エサだけ与えられて、可愛がられているにしても、イプセンのノラ
じゃないか。 自由がないのだ。
この子たちに、自由に広い野原で、木登りなどさせてみたいと
いつも思う。
私は、付き合っている仲間からみれば、かなりランクの低い生活
をしていると思う。
でも今、しみじみと幸福だとおもう。 自由があるからだ。
若い頃は、平凡な暮らしながら、安定した生活と、健康な家族で
それなりの幸せ感はあった。
だが、いつも家庭での拘束感はあった。自分だけの時間が欲しい
サラリーマンの生活の主婦をしていて、それなりの自分の時間は
あったのだが、私はその希求が強いのだ。 我儘な私である。
今は、まるごと自分だけの一日を使える。
お掃除を後回しにして、本を読んでもいい。
夫に許可ももらわずに旅行にも行ける。
夫は、ダメと言うことはなかったが、やはり「いつからいつまで、
どこそこへ旅行に行きたいけど、いいかしら」と許可をもらう。
それにひきかえ夫の側はこうだ。「今度どこそこへ行くからな。2泊3日だ」である。
それから、出かける前は、留守中の家族の食事の支度。
出かける前が、一番くたびれる。
私は5人兄弟姉妹の末っ子である。いつも目の上のタンコブが
あった。 可愛がられて育ったが、いつも管理下に置かれていた。
結婚も早かった。 21才のときである。
また、夫の支配下にいた。
怠けるも、励むも自由な暮らしを享受している今、我が家のネコが
万全の幸せネコとは思えない。