以前、新聞の投稿欄で、読んだことである。
老婦人が、長い間入院していて、退院して間もなくのこと
河原に散歩に出たら、そこに足の悪い老婦人がいて、杖を川岸に
落として、拾えずに困っていた。
拾ってあげたら、「ありがとうございます。大変助かりました」と
お礼を言われた。
その有難うの言葉が、砂漠の中の水のように、体中にしみて
行った。 うれしかった。
病気になって、お嫁さんや家族に迷惑をかけ、病院では、医者、看
護士、見舞い客、あらゆる人に、ありがとうと頭を下げつづけた。
無力な思いが、体を占領する。
私でも、人に喜んでもらえた。 ありがとうと言ってもらえた。
気持ちも明るくなって、家に帰った。というような内容であった。
痛いほど、気持ちが分かる内容であった。
普通の人間を、刑務所の罪人と看守とに役割を分け、生活させた。
1ヶ月だったか、同じ立場の人間だった筈が、罪人を演じた方は
ひくつになり、看守役の方は、ごう慢な心になったとTVで見た
ことがある。
良き病人たらんと、まわりに頭を下げ続けるのは、知らず知らず
のうちに、心をむしばむことになる。
病気になっても、卑屈にならず、あかるい笑顔をつくっていたいも
のだが、ハテ サテ 現実になったらどうであろうか。