豊平のセリ市は、毎奇数日12時から開かれていた。
古い店の前庭に、専門の人の修理済みの自転車、拾いやの持ってきた家具、早く帰りたい荷主の品々がならんでいる。 そこのセリが済むと、店内の土間。ここは前日に持ち込まれた買取やの、少し程度の良い家具。 桐の箪笥、家電他。
ここも済むと、室内。中央一段高いところに、セリのオーナー。
100キロ近い30代の男。
(通い出して数年して、なにか商売がらみで悪いことをして、刑務所に半年ほど入っていたことがある。それでも代理の人がセリは続けていた。)
後ろに帳簿をつける女性二人。30人以上は毎回常連が集まる。なんとなく座る場所は決まっている。「ハイ100円 100円 100円」と驚くような低値から始まる。200!300!350!と声がかかり、声が途切れると、決まり。ワンテンポ遅れて声を出してもダメ。買おうか、買うまいか決断に神経を使う。 初めの頃は凄く疲れた。
同棲解消など、部屋一杯の荷の片付けなども買い入れやは頼まれるから、ダンボールに適当に分類して持ってくる。食器、鍋、化粧品,CDの山、マンガ。
私はこういう何が入っているか分からない福袋のようなダンボールをよく買った。配達しなくてもいいし、車にビッシリ詰め込める。ガラクタばかりでハズレのときもあるし、高級な食器とか、飾り物が入っていて、ホクホクのときもある。
今のように、100円ショップで、いいものが売られている時代ではなかった。
買い入れやの荷主でも、信用のある人と、無い人がいて、セリの出し値から違っていた。
韓国人のおじいさんがいて、拾いやも、買い入れもする人だったが、ずるくてみんなにバカにされていた。ずるくなくては生きていけなかったのだろう。
チラチラなしのアダルトビデオも積まれ、ウラ、オモテということもここで知った。
着物も山と出るが、物凄く安い。紬とか、しつけのままの留袖などは、一枚づつセルが、絹物でも4.5枚一山だ。金襴の帯も一山500~1000円、こういうのを扱えたら、儲けは大きいのだが、私にはその才覚は無い。
つづく・・・・・・・