セリ場に集まる店舗持ちの業者だって、直接客から買い入れる方が多い。
入院していた親が死んだ。古いタンスを引き取ってほしい。などとくると、まずロクなものはない。骨董には間があるタンス、ウールの着物の山が定番だ。
買い入れというよりも、引き取り料をもらって、整理してやることも多い。その引き取ったタンスの底に敷いてある、古い新聞紙の下とか、かくし引き出しに何十万もヘソクリが隠されていることがあるという。業者はまず、その辺を丁寧に見るらしい。
海千山千のオトコたちである。なかには折角オトシタ品を、トラックに間違ったふりして乗せて持っていかれてしまうこともある。外でセリ落とした品は、土間にかためておいて置くしかないし、室内でオトシタ品も、土間に集めておく。目が届かないのでやられる。口惜しい思いを何度もした。
セリが室内へ移動するときは、オーナーがそうしたトラブルがないように荷積みする業者に目を光らせていて、少しの間が出来る。その時間は近くに座っている人たちの交流の時間。いろいろ情報をもらう。たとえば食卓をオトシタ時は、この程度だと、幾らの売値をつけるかと聞くのだ。値段のことも、荷積みでも、こちらが素人で競合もしないので親切にしてもらった。
だが荷主が商品をセリにかける。こちらが声を出す。競走相手がいなければ一発で決まるのだが、仲間がグルになって声を出してくる。ドンドン値が上がる。こちらが思ったより早く諦めると相手は具合が悪いのだが、間違って相手にオチルことになっても、荷主とは話し合いが出来ているのだろう。
私も品物を持っていったときは、仲良くしていた人にセリ値をあげてもらったからあいこだ。
車の荷台に大きなものを載せたり、ロープで縛ってもらったり、お世話になるので、一升瓶をとどけたり、それなりに気は遣った。
勉強のために、骨董市のセリにも何度か行った。豊平のセリ市より、こちらは大分金持ち揃いだ。セリの金額が違う。何万~何十万と出る。 ひと癖もふた癖もある男たちや女たちだ。
私は小心者で冒険はしたくないから見学だ。どういうものが、どういう値段で動くのか知りたいだけだ。
商売をするためには、売る商品がなければダメだ。毎日でもセリ市に顔を出したかった。
チョット店に置いておきたい気の利いた商品は、真っ先に売れていく。あとはガラクタばかりだ。
特にいい品物は部屋の奥に入れてしまう。心あたりのお客さんに電話してまず見てもらう。
はずしたことはなかった。 気に入って即決で買ってもらえた。 が、そんなに度々あることではない。
こんなもの誰が買うかと思うような品物も売れていくから、世の中タデ喰う虫もすきずきだ。
我が家の不用品はあなたの宝物だ。
つづく・・・・・・