常連さんの客なら「ごゆっくり~~」と言って部屋に入っている。つきまとってはかえって品定めが出来ない。ころあいを見て出て行くだけでいい。
冬道は危険なので、セリ場通いは、毎冬お休みしていたが、商品はある。
海に近い場所なので、ロシア人が来た。暖房していない、しがない店内である。数人で来ることが多い。寒い店内にはりついて、目を光らせていなければならない。「ロシア人、お断り!」と張り紙を出したい気持ちだ。実際に万引きもされた。
万引きはほかにもあった。 若い男だった。ベラベラとよく喋る男だった。大きい紙袋を持っている。適当に相手をしていたが、まだ始めたばかりの頃で、甘かった。仕入れ値、6万円の指輪と小型ラジカセをやられた。
その男は、一年ほどして、今度は老人に変装してきた。夕暮れなのに、濃いサングラスをして、歩くのもやっとというふうに杖をついて入ってきた。
そのときにすぐ分かった。あの男だと。老人ふうの声を出して必要もないことを喋る。「あなた、本当は若いのでしょう?サングラスを取ってみてください」と言ったら、シブシブ半分ほどサングラスを持ち上げたが、逆光になっていてよく見えない。でも確信はあった。ドキドキして「なんでそんな変装してくるの」とも怒鳴れない。今更言い立てても証拠もない。ツッケンドンに相手したら早々に出て行った。どうしようもないのだが、シャッターを閉めて後をつけた。あんなにヨボヨボしてたくせに、一応はビッコをひいて見せているが、凄く速い。かなり遠くの住宅街まで追って行ったが、捕まえて変装をはがしてみてもどうしようもないので、諦めて帰った。
ドキドキして健康に悪い。
同業者どうし、結構よその店に、行ったり来たりするものだ。自分のところには無い品物を客に頼まれると、他の店にあれば買ってきて売る。利益は少なくても、すぐ売れるものだし、客への実績にもなる。私も仕入れの帰りに、よそのリサイクル屋に、勉強がてら寄ったものだ。欲しいものがなくても、見学料に一品でも買ってくる。マージンは出ないが損はしない。
地元の同業者に古い皿二枚やられた。チョット高い皿だ。帰った後に気が付いたが、あとの祭り。置いてあったあとの空白がやけに大きく見える。 現場で押さえないとどうしようもない。 その後もその人は来たが、相手にしないで冷たくあしらたっら、身に覚えがあるのでもうこなくなった。
今もその業者は、国道筋に店を出しているが、その前を通るたびに、「どろぼう○○!!」と心の中で叫んでいる。
つづく・・・・・