血を吐く思いで作った50円のお金で無罪を勝ち取り、夫は無事妻子の許へ帰ってきました。
だが様子が変です。親戚の者達がお帰りと歓迎する中、夫はコマツの方へは目も向けようとしません。
ある早朝、誠一郎はコマツと寝ていたナヲを無理矢理連れ去ります。
夢のように思い、実家の両親や兄に話しますと、どんなにコマツが夫のために苦労をしたかを知っていますから、大変な立腹です。
「そんな不実な人間とは知らんでいたが、もう帰さん」となります。4日ほどして、誠一郎の知人が来て「帰してもらいたい」といってきますが、父親は帰しません。 コマツは毎日泣いてばかりいます。
ある夜、コマツの母は、夫に内緒でコマツに「どんなに辛かろうが、子供のために帰っておくれ」と早朝、手をとって山道を送ってきます。
帰えってみると誠一郎も両親も、相変わらず冷たい態度でしたが、ナヲは大喜びします。
毎日の辛さに、井戸に飛び込もうとしますが、ここで死んでは、父や兄の反対を押し切って送り返してくれた実母も生きていられない、と思いとどまります。
相変わらず誠一郎とその両親は辛く当たり、針のむしろの生活です。
或る日、一人の坊主が参ります。 つづく