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仔猫時代 今でもず~っと仲良し
by oss102
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祖父と祖母のこと・・・吾等の一生より コマツに感謝はするものの
 無事未決監から出てきて、エセ坊主によるコマツへの誤解のくだりは書きました。
そうした中で・・・・

それから旭川で筆耕したり、農場の監督をしたり、代用教員を勤めている間は、妻に随分苦労をさせました。

妻が家のためを思ふて命がけの働きをしてくれたことを、あまり嬉しく思いませんでした。
良妻賢母というものは、そんなものでは無いと思いました。
コマツの母の如きが真の良妻であり、良い母であると思います。
 と長年の心のうちを書く一方で・・・・・

コマツが真に妻とも、命の親とも心の中で感謝していることは、妻は自分の着物ばかりでなく、可愛い我が子の着物まで売って、控訴金50円を納めてくれた事です。

もしもあの時、その金を納めてくれなかったならば、私は無実の罪に服さねばならぬのです。
私は、万一無実の罪に落ちるならば、生きてはおられん、舌を噛み切ってでも死なねばならぬと決心をしていました。

それからもう一つ、常に感謝していることは、旭川にいて生活の困難な中に、私を師範学校に入れてくれたことです。

もしもあの時、私が師範学校に入ることが出来なかったならば、一生無資格の教員で終わるのでした。

故に妻がどんなに失敗をしましても、たとえ財産全部をなくしましても、決して恨みません。
生活以上の財産は無いからです。
私の生命を助けてくれた妻が、財産をなくしたとて恨むことは出来ません。
妻が商業に失敗の結果は、自ら非常なる勤勉の結果でした。

札幌に於いても、母恋に於いても、実にいふにいわれぬ苦労をしました。

この小花井に来てから、漸く楽になったのであります。


                                    つづく

                                       

by oss102 | 2006-09-02 17:12 | 日々のこと | Comments(8)
Commented by あきの at 2006-09-02 19:01 x
「生活以上の財産は無いからです。」この言葉の重み、生活できることは当たり前と考えているわたしたちは、ハッとします。
妻のことを理解し、感謝していながらなお、ちょっとどこかに、妻のべつな姿を欲している。この辺りの微妙な気持ちが男のわがままであり、世の中で間違いを起す男たちの原動力になると思いました。もちろん誠一郎氏は、そうではありませんでしたが。
Commented by chiyomi at 2006-09-02 22:55 x
妻への感謝の気持ちと、夫としての心情の微妙なずれをこのように書いて残された誠一郎お祖父さんはやはり正直で誠実な方で、明治の男性の中で進歩的な気持ちの持ち主だと思います。だからこそコマツお祖母さんは晩年こころ安らかに幸せだと書き残されたのですね。明治の女性は一生自分の頑張りを認めてもらえずに終わる方も多かったことと思います。
Commented by こじま at 2006-09-03 13:52 x
男の微妙な気持ち(意地)、分かる様な気がいたします。
Commented by oss102 at 2006-09-03 16:54
あきのさん、コマツの母も、誠一郎の母も女の鑑みと言われるほど、夫に逆らわず尽くしてきた人です。ず~~っと女とはそうするものだのとの思いが取れなかったと思います。士族の世界が続いていたら、コマツも武士の妻として平穏に暮らしたのでしょうか。
こんなものは書き残さなかったと思います。
Commented by oss102 at 2006-09-03 16:59
chiyomiさん、誠一郎も好きな絵を描いて、画家になっていたかもしれません。人生の分かれ道でしたね。戦争で夫を失った人、明治維新で別の人生を生きなければならなかった人たち、どんなになっても人間は結構たくましいものですね。
Commented by oss102 at 2006-09-03 17:01
こじまさん、コマツの奮闘もわかりますが、男の気持ちも分りますね。
この時代の男ですから、その思いは強烈に何代もすりこまれたものでした。
Commented by hanairomimi201 at 2006-09-03 17:08
コマツさんは「一豊の妻」みたいだと思いました。
夫を信じるだけでなく、師範学校にまで入れるなんてすごいですよね。
「ただ一心に子供をキチンと育てるために懸命に働いた」・・そんな場面ももかかれてありましたが、正に良妻賢母なのに誤解もあって認められない時期もあった。
・・それにも耐えて、すごい女性だ・・それしかありませんね。

Commented by oss102 at 2006-09-03 20:26
hanairomimiさん、母は誠一郎の母に育てられましたから、どうしても仕族の良妻賢母の形になります。そこで私たちも誠一郎びいきで育ちましたが、今の時代に読み返して見ますと、やむをえなかったところや、凄い女性だったことがわかりました。
読みながら私の中で、ドラマの主人公にして映像を想像していました。
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