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読売新聞の土曜小説、水村美苗の母の遺産は以前にも載せた。
図書館にあっても絶対に手に取らない小説である。
かりに読み始めたとしても、私は読み続ける気がしないと思う。
だが、こうして分割読みするのは楽しみである。
ぜいたくな上流階級にあこがれ続けた母の死の間際の老醜を、いやというほど書いた。
母は死ぬ。母への愛のあたたかさはみじんも書かないのに、次女の美津紀はさいごまで看取る。
夫は愛人をつくっている。母の遺産で、ちょっと贅沢な箱根のホテルに逗留する。
そこで夫と愛人のメールのやりとりをゆっくり見るために。
ホテルのロビーで彼女はあたりを見回す。こんなくだりがある。
人から見られるのは、30代・40代・50代と美しい一律な線を描いて減っていき、今は、もう誰からもみられない。だから自分の方で人を観察する。これが女の人生の法則というものである。
著者はこの小説であくまで美に拘っています。このこだわりがあるから、老醜をこれだけ克明にあばけるのだと思いました。
by oss102
| 2010-09-22 16:59
| 本
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