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テントの中のサーカスを見たのは子供の頃だ。今は大きな建物の中ですね。
久田恵の書くものが好きです。 26年前に出版され絶版になっていたものが、去年復刊されたのです。
彼女は35才のとき、1年未満、サーカスに入って炊事係りとして働きます。サーカスは人さらいの子に芸をさせる・可哀想な子、という概念とは違った、あたたかなサーカスの人間関係を書いています。まだ舞台も芸をするその家族もテント生活の時代です。
東京で保育園に行かなくなった子を連れての仕事に行き詰まり、サーカスの世界に飛び込んだのです。住むテントと食事つき、給料も出て、ここでお金を貯めなさいよと言われる。
4才の子供が4人。たちまち群れて活き活きと一日を暮らす。喧嘩もする。
ホームレスのオジサンたちとも仲良くなる。
ショーに出る動物たちを愛するオジイサン。テントを壊し次の場で組み立てる逞しい男たち。
命懸けのサーカスの芸人たち。食事を作るベテランママたち。むかし懐かしのジンタの音とともにみんなの生きざまが伝わって来ます。
その息子、連(レン)は今、稲泉連として母親と同じ大宅賞ノンフィクション賞をとってます。
喧嘩に強くなりたい・・と連は母親相手に練習する。
或日、4才児同志取っ組み合いの喧嘩になる。
連は明らかに劣勢だが、柄の大きい相手が辟易するほどしつこく食い下がっていた。
喧嘩をしながら子供たちは、互いの生命を響き合わせ、一体感を強めていく。打ちのめされた屈辱感や心地よい勝利感を通してしたたかな現実の手ざわりを身のうちに感じとっていく。暴力の何たるかを身体で覚え自分の痛みを通して相手の痛みを理解する回路を手に入れる。少しずつ、喧嘩にもルールがあることを知り、他人との向き合いかたを覚えていく。
4才児どうしの力関係は決着がつき、テント村の中を駆け回る子供たちの中に飛び込んだ連は、すっかりサーカスの子らしい素朴ないきの良さを身につけていったのだった。
こうして発散していればいじめもなくなりますね。
by oss102
| 2012-10-03 15:25
| 本
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